《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第2章 謎はブラックに始まる
「あ、あの、トド松先輩……」
「ゆりちゃん、今、何時だと思っているの?」
先輩の突き刺すような口調に背筋が凍った。
「すみません。道に迷ってしまって……」
「……なーんてねっ! 大丈夫だよ! ここ山の中で分かりにくいからねっ」
トド松先輩がエヘッと笑う。
よかった……。私は胸を撫で下ろした。
しかし、それも束の間、トド松先輩の表情がまたスッと冷たくなる。
「でもさぁ、ゆりちゃん。十四松さんに先に挨拶するんだね。僕、淋しいかも……」
ジトッと睨まれた。
「へっ!? あっ、そんなつもりは……。す、すみません!」
「ふーん……。いいよ。許してあげる。その代わり、今度何か奢ってね。や・く・そ・く!」
ハートを飛ばしながら、ウインクをする先輩。
う……あざとい……。
トド松警部補は、チョロ松警部の部下で私の先輩にあたる。警部のチームに配属になってから、このあざと可愛い先輩には翻弄されっぱなしだ。可愛いだけじゃなくて、急にドライな対応をされたりするから、気が抜けない。
「ところで、先輩、捜査は今どういう状況なんですか?」
私は話題を変えるべく、現場を覗き込んだ。
「う〜ん、まだあまり進んでいないんだよね」
トド松先輩の顔が曇る。
「え? 何も見つかっていないんですか?」
「うん。凶器も出てきていないしね」
鑑識作業をしていた十四松さんも顔を上げた。
「指紋は今調べてるよー! 足跡も持ち帰って調べるけど、ざっと見たところ、怪しいものはなさそうかな〜」
「そうなんですか……」
証拠が何も見つかっていないとなると、捜査が長引くかもしれない。
私は被害者が倒れていた場所を眺めた。白いチョークで印がつけられている。床が真っ黒のため、血痕が残っているかどうかも見ただけでは分からなかった。