《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第27章 トド松END〜警部補とわたし〜(※)
遠くてもかまわない。
先輩と一緒にいたい。
「それは……どこですか?」
「地中海だよ。父さんが島を持っている。事業は引退するとか言いながら、向こうでもなんだかんだで起業したらしくてね。成功して今はいくつか島を持っている。生き返ったときに連絡を取ったんだ。日本が煩わしいならこっちに来ないかと言われたんだ。そこでふたりで暮らさない?」
「地中海……」
予想外だった。
まさか海外とは思っていなかった。
でも……。
「そこなら誰にも邪魔されない。ゆりちゃん、僕と結婚してほしい。子供を作ろう。一緒に家庭を作るんだ。僕が幸せにする。約束するよ」
「トド松先輩……」
たしかに仕事をやめるのは少し惜しい。
でも、迷うまでもなかった。
先輩とふたりで平穏な日々を暮らすこと。
いつまでも一緒にいること。
これが私の一番の望み。
「やっぱりだめ……かな?」
先輩が淋しそうに笑う。
私は首を振った。
だめなわけがない。
「行きます。先輩、一緒に行きましょう?」
「いいの? 赤塚どころか日本を離れるんだよ?」
「はい」
大丈夫。
不安なんてない。
先輩といられればそれでいい。
「ゆりちゃん……」
私たちはまた抱き合った。
ポケットの中でスマホが鳴っている。
たぶん、署からだ。
チョロ松警部かもしれないし、あつしさんかもしれない。
でも今は少しだけ放っておいてほしい。
あとでちゃんと連絡するから。
電話は鳴り続ける。
私は先輩にしがみつく腕に力を入れた。
もう離れたくない。
絶対に。