《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第2章 謎はブラックに始まる
黒い廊下を進み、事件現場となった製造室に入る。すでに捜査員たちが慌ただしく動き回っていた。
部屋の奥には広い作業場があり、長いベルトコンベアが設置されている。
手前には大型機械が所狭しと並べられ、不気味な音を立てていた。
「安 全 第 二」
「会 社 は 神」
目を疑うようなスローガンが、壁に掲げられている。これ、ギャグじゃなくて、本気なんだろうか?
蒸し風呂のように暑かった廊下とは一転、部屋の中は冷房が効いていて涼しい。一息ついたのも束の間、トド松先輩の大声が響いた。
「十四松さん! 早くしてよ! まだ分かんないの!?」
嫌な予感……。声のしたほうを見ると、鑑識課の十四松さんが目を吊り上げ、立ち上がったところだった。
「ちょっと! そんな言い方ないでしょ? 僕たちだって必死にやってるのに!」
うわぁ、十四松さんが珍しく怒っている。トド松先輩も機嫌悪そうだし。タイミング悪すぎ。今、話しかけるの嫌だな……。
私はのろのろと二人に近づいた。
「あ! ゆりちゃん!」
十四松さんが私に気がつくと、トド松先輩も振り向いた。
「十四松さん、お疲れ様です……」
「あはー! お疲れー! ゆりちゃん、研修は終わったの? 今日から現場?」
十四松さんがニコニコしながら声をかけてくれる。
「はい。そうです……」
「そっかー! 頑張ってね! 何かあったら僕が力になりマッスル!」
「ありがとうございます、十四松さん」
十四松さんの明るい笑顔に癒やされるものの、隣のトド松先輩が物凄い顔をしているのが気になって仕方がない。