《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第5章 女王様への黄色い嫉妬(※十四松)
無機質な仮面の二つの穴から覗く生々しい瞳。
恐怖で見つめ返すことしかできない。
金縛りに遭ったように体が固まる。
通り魔は、ゆっくりと鉈を頭上に振りかざした。
次の瞬間、自分でも思いがけない言葉が口をついて出た。
「もしかして、一松さん……?」
通り魔の手が止まる。
私たちは数秒間見つめ合った。
「本当に一松さん……なの?」
仮面の奥で相手がどんな表情をしているのか分からない。
嘘だと言って。
あなたは、一松さんじゃないでしょ?
次の言葉を出そうとした瞬間、突然通り魔は横へ吹っ飛んだ。
「ゆりちゃん、大丈夫っすか!?」
荒い息遣いと共に立っていたのは、十四松さんだった。
彼が通り魔に飛び蹴りをしたのだ。
通り魔はすぐに起き上がると、私たちが動くよりも先に逃げ出した。
「待て!」
十四松さんは追おうとしたが、ハッとして私を振り返った。
「ゆりちゃん! 怪我してない?」
「私は大丈夫……」
十四松さんは私をベンチから立たせると、怪我をしていないか体中を見回す。
「ごめんね! 僕のせいでこんなところに一人で!」