《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第5章 女王様への黄色い嫉妬(※十四松)
歩いてくる様子を何となく眺めていると、違和感を感じた。
じっと見てみる。
顔が白い……?
違う。
顔が白いわけじゃない。
白色の仮面を被っているんだ……。
私に向かって歩いてくる人物は、異様な格好をしていた。
見覚えのあるジェイソンのアイスホッケーマスク。
茶色のエプロン。
左手には鉈、右手に金槌。
仮面にも鉈にも血のような赤い液体がべっとりとついている。
『よくニュースになっているのにゆりちゃんは知らないの? 仮面の通り魔は、アイスホッケーマスクを被って、赤塚区の公園に出没するんだよ』
トド松先輩の言葉を思い出した。
間違いない。
今、目の前にいるのは『仮面の通り魔』……。
ゆっくりと、しかし、確実に私に向かって真っ直ぐに近づいてくる。
逃げる?
応援を呼ぶ?
……だめ、間に合わない。
反射的に腰に手をやる。
しまった。帰るところだったから、拳銃は署に返して持っていないんだった。
私はベンチに座ったまま、身構えた。
もう逃げられる距離じゃない。
自分の足がカタカタと小刻みに震えていることに気づいた。
まるで自分の足じゃないみたい。
止めようと力を入れても震えを止められない。
目の前まで来ると、通り魔は私をじっと見下ろした。