《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第26章 十四松END〜鑑識さんとわたし〜(※)
「トト子さん、私も手伝います」
トト子さんは、私の顔を見て一瞬顔をしかめた。
「新人さん、十四松くんとずっと一緒にいたの? ……ま、いいわ。ここの交通整理を代わって。車を迂回させてね。人が足りなくて困ってたの」
「分かりました」
カラーコーンの前に立つ。
旗を振りながら、十四松さんを見ると、テキパキと部下たちに指示を出し、現場の捜査をしている。
あれだけ仕事できたら警視庁にも行っちゃうよね。
十四松さんにとっては、鑑識の仕事は天職なんだろう。
そう考えると、警視庁に行くのは彼にとっていいことに決まっている。
淋しがってはいけない。
十四松さんを応援しないと。
「警察です! 中に入らないでくださーい!」
トト子さんの声。
「轢き逃げだって。若い女性が轢かれたんだって」
「トラックが猛スピードで走っていったらしいよ」
ざわざわと野次馬の声も聞こえる。
「どうします? 検問張る?」
トト子さんが十四松さんのそばに行った。
「いや、たぶんもう近くにはいないよ。すごいスピードが出てる」
「じゃあ、遠くに逃げたってこと?」
「トラックの車種は調べれば分かるから、車庫証明と照らし合わせよう。そこのガードレールに派手に前をぶつけているから、バンパーにへこみがあるはずだよ。あとはスリップしてるから、タイヤを調べればほぼ間違いない」
「犯人がすぐに修理に出してしまうかも……」
「うん、急ごう」
騒然とする真昼の交差点。
普段ののんびりした十四松さんとは違い、機敏に動くその姿についつい視線がいってしまう。
何だろう、このモヤモヤした気持ち……。
私は十四松さんを見つめながら、交通整理を続けた。