《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第25章 一松END〜庭師とわたし〜(※)
「えっと……すまない、ゆりちゃん」
カラ松さんが申し訳なさそうに眉を下げる。
「大丈夫です。こちらこそ、色々すみません」
カラ松さんは何度も私のほうを振り返ったが、一松さんに急かされ、渋々運転席に乗り込んだ。
カラ松さんに色々気を遣わせちゃったな、申し訳ない。
でも、まさか一松さんがいるなんて思いもしなかった。
おまけにめちゃくちゃ不機嫌だし。
車はすぐに出発する。
駐車場を出ていく瞬間、助手席の一松さんと目が合った。
特に感情の見えない瞳。
何を考えているのか分からない。
「一松さん……」
車は駐車場を出て右折すると、あっという間に走り去っていった。
残された私はトボトボと歩き出す。
『好きです』と答えておけば、よかったのかもしれない。
それならすべてがうまく行っていた気がする。
でも、言いたくなかった。
私だって、腹を立てたり苛々することもあるわけで。
いきなり現れた一松さんにカラ松さんとの仲を疑われ、ケチをつけられ、正直イラッとしてしまったのだ。
恋人なら確かに口を出す権利はあるのかもしれない。
でも、彼は恋人じゃない。
はっきりと気持ちを伝えられたことなんてない(自分も伝えていないから、あまり強くは言えないけれど)
卑屈な彼は嫌い――裏を返せば、普通にしている一松さんが好きってこと。
でも、一松さんは私の気持ちなんて知る由もないだろう。
「はぁ……もう……なんだかな……」
ここから徒歩で家に帰るには少し遠い。
電車で帰ってついでに駅で買い物でもしよう。
私は最寄りの駅に向かって歩き出した。