《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第25章 一松END〜庭師とわたし〜(※)
「一松さん、なんでカラ松さんのこと嫌がるんだろ……」
こんなところで働くより、洋館で庭の手入れをしたほうが絶対にいいのに。
カラ松さんは一松さんを溺愛してるから待遇もよさそうだ。
一松さんだって本当はカラ松さんのことを慕っているくせに。
「もうっ、一松さんってば、素直じゃないんだから……」
まるで好きな女子を虐めちゃう小学生男子みたいだ。
殺人事件以来、洋館に戻ってこいとカラ松さんが熱心に声をかけているのに、一松さんは毎回無視していた。
「ま、仕方ないか……」
製造室へ行こうと歩き出した瞬間、後ろのドアが勢いよく開いた。
「ゆり!」
呼び止められ振り返る。
服を整え終わった一松さんが立っていた。
彼がこんな大声を出すなんて珍しい。
「どうしたの?」
「あのさ、工場再開するまでゆりの部屋にいてもいい……?」
「え?」
「いつもここで休みなく働かされているから、たまには外で過ごしたい……仕事ないのに寮にいても仕方ないし……」
私は咄嗟に自分の狭い部屋を思い出した。
あの部屋で二人で過ごす?
それって、もう恋人じゃないの?
「いいけど……一人暮らしだから狭いですよ?」
「うん……構わない……狭いほうが落ち着くし……」
猫みたいなことを言う一松さん。
工場の外で過ごしていたら、一松さんも別の仕事に就く気になるかもしれない。
私は頷いた。
「分かった。いいですよ」