《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第24章 チョロ松END〜警部とわたし〜(※)
そっか……!
日頃、一緒に行動しているから、声を出さなくても警部の指示は何となく分かる。
『運転席へ』
私は背を低くして、音を立てないように車の後ろから回り込んだ。
「ちょっ、嬉しいけど! 前が見えないっ! にゃーちゃん離して!」
男がジタバタしている隙に、チョロ松警部が後部座席に乗り込む。
「ねぇねぇ、にゃーのこと好き? ずっと応援してくれてたんでしょ? チュウしてもいいにゃ?」
にゃーちゃんの甘えたような声。
「もちろんだよ、にゃーちゃん! でも、包丁持ってるから危ない! とりあえず離してっ!」
あんなに殺したいと言っていたくせに、やっぱり好きなアイドルに急に抱きつかれたら、無下には振り払えないようだ。
私は運転席のドアの前に立つ。
窓から後部座席の警部と目が合う。
警部がゆっくりと手を上げた。
今だ。
私はドアを勢いよく開いた。
同時に警部が男の手から包丁を奪う。
「なっ!?」
男が声を上げると共に、私は後ろから男の腕を引っ張った。
肘を胸で押さえ込みながら、男の手首を思い切り下げ、関節技をかける。
「あっ痛っ! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」
激痛に叫ぶ男を私は勢いよく引きずり出した。
警部が後部座席から降りて、助手席のにゃーちゃんを素早く降ろす。
ここまでの流れは完璧なはず。
「くそっ……!」
一瞬の隙をついて男が座席に手を伸ばした。
「っ!」
私は男を再び掴む。
その時、運転席に置いてあった封筒のようなものが勢いで宙に舞った。