《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第24章 チョロ松END〜警部とわたし〜(※)
「にゃーちゃんを連れてくる気はないのかよ! くそ! とっくに10分は過ぎた! もう待てねぇ! この女を殺すからな!」
包丁を持つ手に力が入るのが分かる。
この手を勢いよく引かれたら終わりだ。
私は目を瞑った。
その時。
「待ってにゃ!」
にゃーちゃんの声。
目を開けると、チョロ松警部の隣から、にゃーちゃんが車を覗き込んでいた。
「にゃーちゃん!? 来てくれたの!」
男の顔が途端に輝く。
「その刑事さんを早く離すにゃ。私が車に乗るから」
にゃーちゃんは、ドアを叩いた。
そんなのだめ!
警部、早くにゃーちゃんを止めて!
目で訴えると、警部は静かに頷いた。
「ドアを開けてくれ。彼女とにゃーちゃんを交換だ」
ギョッとして警部を見る。
何を言ってるの!?
警察官を助けるために、一般市民を引き渡すなんて。
男がヒュウッと口笛を吹いた。
「やっぱり警察もそんなもんなんだな。ファンと言ったって、所詮その程度だろ? 好きな女には代えられないってか?」
警部は特に表情も変えず、落ち着いた様子でコツコツとドアを叩く。
「御託はいい。早く開けるんだ」
「開けるけど、変なことはするなよ? 少しでもおかしいと思ったら、この女を殺すぜ?」
「大丈夫だ。彼女の命には代えられない」
私は困惑してチョロ松警部を見上げた。
どうして、にゃーちゃんを犠牲に……?