《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第4章 ギルトな幽霊は館に潜む
「あ、はい……」
男はあっさりと目の前に現れた。
バスローブを羽織り、手にはワイングラス。首には金色のチェーンが光る。
凛々しい眉とは対照的に瞳は気弱そうに揺れていた。
私は咄嗟に男の足を見た。
足はちゃんとある。大丈夫。
幽霊ではない……はず……。
あれ? 最近の幽霊は足あるんだっけ?
いや、『最近の幽霊』って何!?
「あ、あなたは誰……?」
「フッ、俺か? 俺は松野カラ松! この館の主人だ」
「う、嘘! カラ松さんは亡くなっているはずです! ほ、本当のことを言ってください! 業務妨害罪で逮捕しますよ?」
「あ、いえ、本当にカラ松です……」
男は弱々しく答えた。
「まさか『自分は幽霊だ』とでも言うつもりなの……?」
すると、カラ松さんは急に真顔になり、吊るされたままの私の頬を撫でながら低い声で囁いた。
「もし、本当に幽霊だったら……どうするんだ……?」
「ヒッ!? つ、冷たい……!?」
私の頬に触れた手は氷のように冷たかった。
ゾクリと恐怖が背中を這い上がる。
「あ、あなた、まさか本当に……!」
カラ松さんは、私の頬から手を離すと、そっと耳に顔を近づけ、甘い声で囁いた。
「美しきガール、俺が恋しいのは分かるが、もう、ここには来ないことだ。これは忠告じゃあない、警告だ……。次、来た時には君の命の保証はしない。眠りから覚めたら、この館のことは忘れろ……」