《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第23章 カラ松END〜洋館の主人とわたし〜(※)
カラ松さんの事情は分からないが、少なくともシェフは主人のために心を込めて料理を作ったはずだ。
戸惑う執事を残し、私はダイニングホールを飛び出した。
エントランスホールを横切り、階段を駆け上る。
「カラ松さん! カラ松さーん! どこですか?」
長い廊下を抜け、隣の棟に移る。
「カラ松さーん!」
廊下には数々の絵画が飾られており、描かれている人物はどれも心なしかブラック工場のイヤミさんに似ていた。
広い洋館を駆け回り、私はいくつもの部屋のドアを開ける。
どこにもカラ松さんはいない。
途中、何度か従業員にも会ったが、みな一様にカラ松さんの居場所は知らないと答えた。
「はあっ、はあっ、だめだ……見つからない……」
膝に手を当て屈み込むと、大きな鐘の音が洋館に響き渡った。
21時か……。
私は音に耳を澄ませる。
洋館の中央に位置する時計塔の鐘の音。
初めてこの音を聞いたのは、おそ松さんと地下室に閉じ込められた時だった。
ここに住み始めてからは、毎日のように聞いている。
「あ、そういえば時計塔はまだ見ていない……」
私は顔を上げた。
中央の棟に戻って探せば、時計塔に上がれる場所があるはずだ。
私は歩き出した。