《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第20章 謎はあの色で終わる
私は溜息をついた。
一松さんとトド松先輩とカラ松さんの関係……。
根底にはやっぱりお兄さんに対する愛情と嫉妬があるんだろう。
先輩の気持ちは分からないでもない。
『自分には何もない』という虚しさと焦り。
それは、まさしく私が警察学校でも警官になった後でもひしひしと感じてきた感情だ。
でも、先輩ならそんなものは乗り越えられたはずなのに……。
私はまた文書に視線を落とした。
<僕は、高校を卒業すると同時に警察学校の試験を受け合格した。
警察官を、選んだ理由は分からない。
でも、銀行強盗の事件が僕の心の中にはあったと思うんだ。
兄さんを助けるために、勇気を出して声を上げたあの小さな女の子。
自分もその子のようになりたかった。
「カラ松兄さん、僕はこの館を出るよ。警察官になるんだ」
カラ松兄さんは、少し淋しそうな顔をしながらも僕を止めはしなかった。
「そうか……頑張れよ、トド松。離れていてもファミリーだっ」
「兄さん、僕はね、この館が嫌いだった。豪華で大きくて人を寄せ付けなくて。でも、もう、僕は金持ちで世間知らずの『松野カラ松の弟さん』なんかじゃない。僕は『松野トド松』なんだ。これからは一人で生きていくよ。さよなら兄さん」
「トド松……」
兄さんは悲しそうに僕を見送った。
僕は家を出て、松野財閥の人間であることを隠し、警察官となった。
僕が警部補になり、チョロ松警部の下に配属になった時、ある財閥の跡取り息子が洋館で殺されるという事件が起こった。
現場に呼び出された僕は、愕然とした。
ある財閥とは松野財閥で、洋館とは僕の住んでいたあの家で、殺されたのはカラ松兄さんだった>