《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第20章 謎はあの色で終わる
私は顔を上げた。
トド松先輩から見た銀行強盗事件……。
同じ場所に居合わせ、同じことを体験した。
にも関わらず、一方の私は病院で母親に抱きしめられ、もう一方のトド松先輩は病院で母親の死を告げられる――。
確かに運命は意地悪だ……。
私はページをめくった。
<カラ松兄さんは元々優しい子供だったが、母さんが亡くなってからは、一層僕に優しくなった。
「トド松、大丈夫か? 何かあったら俺に言えよ」
仕事が忙しくてほとんど家にいない父よりも、常に側にいて支えてくれるカラ松兄さんの方が、よっぽど保護者のような存在に思えた。
その頃の僕にとって、カラ松兄さんは兄であり、母親であり、父親だった。
そして、そんなカラ松兄さんの心を占めていたのは、あの少女だった。
「なぁ、トド松。銀行で俺たちの横にいた女の子を覚えているか?」
「うん。僕たちと同じくらいの年だったよね?」
カラ松兄さんは頷いた。
「あの子が助かったかどうか気になっているんだ……」
カラ松兄さんも僕も、銀行強盗から僕らを庇ってくれたあの小さな女の子が気になっていた。
あの後、あの子はどうなったんだろう。
特に兄さんは、あの女の子のことがどうしても忘れられず、何年にも渡って色々な手を使って探したようだった。
しかし、名前も何も分からない状態での捜索は難しく、結局女の子を見つけることはできなかった>