《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第20章 謎はあの色で終わる
<僕には双子の兄がいる。
カラ松兄さんだ。
僕とカラ松兄さんは顔が瓜二つだったが、雰囲気は全く違った。
男らしいカラ松兄さんに対し、僕はよく女の子に間違われた。
「まぁ、可愛いお嬢ちゃん。……あら、違う? 男の子? そう、ごめんなさいね。あまりに可愛いらしかったものだから」
何度こんなことを言われただろう。
でも、僕は特に嫌だとは思わなかった。
男だって愛嬌と器量は必要なんだよ。
子供ながらに分かっていた。
みんなに愛された方が人生何かとお得なんだって。
可愛く、あざとく、賢く生きる――子供の頃から、僕は常にこのことを意識してきた。
とにかく、僕とカラ松兄さんは、裕福な両親の下で、ぬくぬくと育てられた。
『あの事件』が起こるまでは>
私は唾を飲み込み、ページをめくる。
胸が痛い。
ここから事件はもう始まっていたのだ。
<あの事件……。
口にするのも忌々しい。
それは僕が9歳の時だった。
母さんに連れられて銀行に行った時のこと。
「カラ松、トド松。母さん、ちょっと銀行の上の人に用事あるから、ここで座って待っててね。すぐだから」
母さんは、僕とカラ松兄さんを置いて、VIPだけが入れる特別応接室に行ってしまった。
たぶん、すぐ戻ってくるつもりだったんだろう。
でも、それが母さんと言葉を交わした最後になってしまった。
ねぇ、産まれてから死ぬまでの間にさ、銀行強盗に遭遇する確率って一体どれくらいだと思う?
かなり低いに違いない。
大抵の人は一生遭わないよ。
そうでしょ?
でも、そんな限りなくゼロに近い確率の出来事でも、起こる時は起こるんだ。
僕らはその日、銀行強盗に巻き込まれた>