《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第20章 謎はあの色で終わる
偶然かもしれないが、横柄でしつこい記者ばかり相手にしてきたせいで、必要以上に構えてしまう。
「ですから! お話しすることは何もありません!」
私が振り返ると、おそ松さんと記者も立ち止まった。
「ご安心下さい。取材ではありません」
記者は微笑む。
よく見ると、まるで仏のような優しい笑顔。
ご利益のありそうな福耳が目に入る。
後光が差しているのかと見間違えるほど、徳の高そうな佇まいに私は思わず息を呑んだ。
「えっと……神松……さんでしたっけ?」
気後れしながら、言葉を絞り出すと、神松記者は静かに頷く。
「ええ。完璧中の完璧、理想中の理想、神のごとく清き松、神松です」
「はぁ……?」
神松記者は鞄から角封筒を取り出した。
「実はここにトド松容疑者の手記があります」
「手記?」
私とおそ松さんは顔を見合わせた。
「ええ、つい最近書かれたものです。私たちが依頼しました。再来週に特集記事として掲載します。優秀な警察官がなぜ事件を起こすまでに至ったかを手記から読み解くという内容です」
「そうなんですか……」
「あ、ご安心下さい。全文を載せるわけではなく、抜粋しますから。出てくる人の名前もイニシャルにしますし」
私は困惑して神松記者を見つめた。
トド松先輩の手記が雑誌に載るのは、正直驚いたが、なぜ私にそれを報告してくるんだろう。