《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第19章 最終決戦(※)
先輩の息が荒い。
顎に当てられたナイフの先がひんやりとしている。
「ねぇ、ゆりちゃん。僕は君のおかげで警察官になったんだ」
トド松先輩がぽつりと呟いた。
「え?」
「そして、君も僕をきっかけにして警察官になった。笑っちゃうね。まさかあの時、隣に居合わせた僕らが同じ警察官になって再会するなんて」
隣に居合わせた……?
まさか……。
私はナイフを当てられたまま、トド松先輩を見上げた。
「じゃあ、先輩は……」
声が震える。
トド松先輩が頷いた。
「赤塚銀行強盗未遂事件。小学生だった僕は兄さんと一緒に人質になった。隣にいた女の子が僕たちを助けてくれたんだ。僕はその時の女の子の勇気が忘れられなかった。あの子みたいに誰かを守れる警察官になろうと思った」
「嘘……だって、隣にいたのは男の子と女の子の兄妹で……」
トド松先輩がくすっと笑う。
「妹じゃない。それは僕だよ。小さい頃はよく女の子に間違われた。服装も可愛らしいものが多かったしね。ゆりちゃんが勝手に勘違いしたんだ」
そんな……。
あの女の子がトド松先輩だったなんて……。
「じゃあ、私が先輩に銀行強盗の話をした時に……」
「うん、その時に気付いたよ。本当はすぐにでもゆりちゃんに言いたかった。それは僕だよって。でも、カラ松兄さんとの関係を知られたくなかったからね」