《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第19章 最終決戦(※)
男の動きが止まる。
地下室に訪れる静寂。
「え……?」
彼は大きく目を見開いた。
「トド松先輩……お願い……もうやめて……」
「な、何を言っているんだ、ハニー? 間違えていないか? 俺はカラ松だ!」
私は男を睨みつけた。
「違う……。カラ松さんはそんなことしない……。カラ松さんは優しい人だし、一松さんのことをいつも心配していた……。あなたはカラ松さんじゃない……」
「っ!」
「そうでしょ? トド松先輩……」
沈黙。
やがて、男は片頬を緩めた。
「バレちゃったら、しょうがないねっ」
さっきまでの低い声とは一変、聞き慣れた可愛らしい声。
私から起き上がると、脱ぎ捨てたバスローブを拾って羽織り、袖で強く顔を擦った。
凛々しかった眉が取れ、見慣れた顔が現れる。
やっぱり、そうだったんだ……。
先輩、どうしてこんなことを……。
「さっすが、ゆりちゃん! どうして分かったの?」
「桃の香り……」
私はぽつんと呟いた。
「え?」
「初めてこの洋館に来た時に、カラ松さんにキスされて睡眠薬を飲まされました……。その時、甘い果物の香りがしたんです。とても懐かしい香りでした。今思えば、あれは桃の香りだったんです……」
「…………」
「懐かしいのは当たり前ですよね。だって、あの日、洋館に行く直前にトド松先輩と一緒にスタバァの白桃ケーキクリーム・フジオペチーノを飲みましたから……」