《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第3章 紫の夜の秘めごと(※一松)
一松さんがドアスコープを覗いて、「1班のやつらだ」と呟いた。
握り締めた拳が小刻みに震える。
男たちの会話は続いた。
「他の奴らにもさあ、後から行くから女がいたらメッセくれって言われてたんだよなー」
「そうなの? ま、いなかったって言うしかないだろ。帰ろうぜ」
この人たち、何を言っているの……?
もし、自分が部屋にいたらと思うと、背筋が凍る。
「もしかしたら、すでに誰かの部屋にいたりしてな」
「ははは、まさか。ありえねーよ。羨ましすぎだろ」
「あんな美人が、底辺の俺たちなんかをまともに相手にするわけねーか」
「そうそう。だから、無理矢理にと思ったんだけどな」
「ついてねーな」
「行こうぜ」
男たちの声が遠くなっていく。
やがて、足音が消え、私たちは緊張を解いた。
「あいつら何考えてんだ……。あんた、どうする? また他の奴らが来るかもしれないけど。ただ、客室は一室しかないんだよな……」
一松さんは真剣な表情で考え込む。
色白な肌を額から一筋の汗が伝うのが見えた。
瞬間、部屋の空気の密度が甘く濃くなった気がして、私は急に胸が苦しくなった。
「一松さん……」
「ん?」
声をかけると、顔を上げる。
「ありがとう。私、客室にいなくてよかったです……」
「うん……」
お互い自然に口をつぐんだ。
薄暗い部屋で二人きり。
エアコンの唸るような稼働音が耳につく。
気づけば、私たちは向かい合っていた。