《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第3章 紫の夜の秘めごと(※一松)
私のために起きてくれていたんだ。
疑ってしまったことを申し訳なく思う。
「定期的に見てるから、心配いらないよ……。あんたはゆっくり寝れば」
一松さんが穏やかに言った。
「そんな! 見張らなくていいから、一松さんも寝て下さい。明日も仕事忙しいんでしょう?」
「俺は大丈夫……」
「でも……」
その時。
暗闇の向こうから、複数の足音が近づいてくるのが聞こえた。
私たちはハッと顔を見合わせる。
考える間もなく、一松さんが私の腕を引っ張った。
素早く自分の部屋に引きずり込んで、ドアを閉める。
足音は私の部屋の前で止まった。
こんな夜中に私の部屋に来るなんて、誰だろう?
息を殺して様子を伺っていると、足音の主は、私の部屋のドアをノックした。
当然、返事はない。
もう一度ノック。
「あれ? いないみたいだな。客室に泊まっているらしいって、聞いたんだけどな」
男の声がした。
ガチャガチャとドアノブを回す音がする。
「おい、鍵開いてるぞ」
別の男の声。
「いないな……」
どうやら部屋を覗き込んでいるようだ。
「んだよ、あの女刑事が泊まっているって噂だったから見に来たのに」
「だなー。うまいこと言って部屋に入れて貰おうと思ったのにな。チッ、つまんね」
二人の騒々しい声が、静かな寮内に響く。