《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第14章 顔のない足音
「っ! そ、そんなにがっかりした顔しないでよ!」
「でも、なんで私を……?」
「だって、交通課の研修に来た時に一生懸命やってたでしょ? 入ってからも頑張れる子に来てほしいじゃない?」
「トト子さん……」
心の中ではそんな風に思っていてくれたなんて。
私が感激で目を潤ませると、トト子さんはそっぽを向いた。
「はあっ、もうっ! この話は二度としないから!」
私は頷く。
部屋に沈黙が訪れた。
トト子さんは、まだ椅子に座ったままだ。
「あの……トト子さん。もしかして、何か話したいことがありました?」
恐る恐る聞いてみる。
「はぁっ!? なんで?」
「いえ、何かあるのかなと思って……」
トト子さんは溜息をついた。
「本当はトド松くんに話そうと思ってたけど、ま、新人さんでもいっか。この間ね、検問張ってたのよ。赤塚交差点の一本奥に入った道のところで」
「はい……」
話の行き先が見えず、私はとりあえず相槌を打つ。
「あ、その道って、僅かに下り坂になっててね、下りきったところに一時停止線があるの。スピードついてるからか、みんな見事に一時停止無視してくれちゃうのよね〜」
「…………」
「だから、その道の先で張ってると、面白いほど違反者が出てキップ切り放題なの! トト子、ネズミ捕りだーいすき! やっぱりストレス解消には、検問よね!」
トト子さんが目を輝かせる。
「は、はぁ……」