《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第3章 紫の夜の秘めごと(※一松)
「一松さん」
部屋に入ろうとしていた一松さんが振り向いた。
『DAT』と胸に印字された紫のトレーナーにゆるく履いたジャージ。
部屋を出る前は寝ていたのか、ボサボサの髪が色々な方向にはねている。
私服を着ていると、どこにでもいそうな普通のお兄さんに見えた。
「あんた……起きてたんだ?」
「たまたま目が覚めて」
一松さんは目を見開く。
「あ……ごめん……ドア開けたのうるさかった?」
「いえ、それで起きたわけじゃないです」
「そう……じゃあ……おやすみ……」
一松さんはドアを閉めようとした。
「あ、待って!」
「何?」
「えっと……」
咄嗟に止めたものの、何と言っていいか分からない。
言葉に詰まっていると、一松さんが私の胸元に目をやり、小さな声で呟いた。
「それ、誘ってんの……?」
「え?」
「何でもない」
横を向いた一松さんの頬が赤く染まっている。
私も自分の胸に視線を落とし、さっきの言葉の意味に気付いた。
そういえば、着替えを持っていなかったから、上はキャミソール一枚で寝ていたんだった。
恥ずかしくなって胸元を腕で隠す。
ふと、一松さんが廊下に出ていた理由に思い当たった。
「あの、一松さん。もしかして、私の部屋に誰も来ないように見てくれていたんですか?」
「まあね……」
一松さんは、横を向いたまま答えた。