《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第12章 事件、ふたたび
私は一松さんを見上げた。
「せっかく頑張ってようやく警察官になれたのに、今から他の業界に転職なんて……」
辛かった訓練校時代が頭をよぎる。
また一から始める自信なんてない。
一松さんが眉を下げた。
「そんな泣きそうな顔されても困るんだけど……。まあ、クビになったら、俺の嫁さんにでもなればいいんじゃないの……俺、今よりもっと働くし……」
「そうだけど、そういう問題じゃなくて! ……って、え?」
一松さんを見直すと、ゆでダコのように顔が真っ赤になっている。
「一松さん、今何て言ったんですか?」
「何も言ってない」
「うそ! 今言ったでしょ?」
「知らない」
一松さんはそっぽを向いた。
今すごい重要なこと言ったくせに!
私は一松さんを覗き込んだ。
「今、『俺の嫁になればいい』って言いましたよね?」
「『俺、うんこしたい』って言った」
「ちょっ! 違うでしょ!?」
一松さんは、ジャージに手をかける。
「なら、ここでうんこするけどいいの?」
「何でそうなるの!? 大体、『何も言ってない』って最初は言ったくせに!」
「うん、だから俺は何も言ってない」
「でしょ? 何も言ってないでしょ?」
「うん」
一松さんが落ち着いた表情で頷く。
「ほらね! って、あれ……?」
私は首をひねった。
何か私が言いたかったことと違う……。