《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第11章 一軍様のリッチなお誘い(※あつし)
あつしさんは躊躇せず、私に近づいてくる。
さらに一歩後退ると、背中が壁に当たった。
いつの間にか私は部屋の隅まであつしさんに押しやられていた。
髪にそっと手がかけられる。
「あつしさん、別にお試しとかいらないので……」
「なら、すぐに愛人になれるの?」
「いえ、それは無理ですけど……」
あつしさんは勢いよく壁に手をつくと、私の顎を掴んだ。
「橋本くん、遠慮はいらないよ……」
まずい、これはまずい。
額から汗が流れる。
でも、相手は警察庁の幹部。
無下に振りほどくのもよくない気がする。
なんとか穏便にやめてもらう方法は……。
私は顎を掴まれたまま、天井の中央あたりにある監視カメラに視線を動かした。
オレンジのランプが点灯している。
今もカメラはこの部屋を写していて、モニターの向こうでは誰かが見ているはずだ。
あつしさんが私の視線に気づき、フッと笑った。
「監視カメラが気になるの? 誰かに見られちゃったら困るよね」
「はい……」
そう。
監視カメラが見てるんだから、早く離して。
そもそも今この状態だって、おかしいはず。
きっと今頃、モニターの向こうでは大騒ぎになって、もうすぐ誰かがあつしさんを止めるために駆けつけてくれるはずだ。