《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第10章 銀行強盗
『死者1名。20代女性』
光る画面に冷淡に表示される文字。
「子供の犠牲者はいなかったみたいだね」
トド松先輩が私を見る。
あの兄妹はやっぱり助かっていたんだ。
安堵すると同時に複雑な気持ちになった。
「でも、犠牲者はゼロではなかったんですね……」
あの時、誰かが亡くなっていたんだ……。
背筋がひんやりとする。
「うん。記録によると、SAT突入時に犯人がでたらめに発砲した銃弾に当たって亡くなったみたい」
トド松先輩が記録を追う。
「そうなんですね……」
なんとなく勝手な憶測で犠牲者はいないと思っていた。
私は女性の名前を見つめた。
「……あれ?」
画面の文字をもう一度確認する。
「どうしたの? ゆりちゃん」
「この犠牲者の名前……見覚えがあるような……」
「え?」
トド松先輩が不審そうに私を見る。
なんだっけ?
どこかで見た名前。
「子供の時にニュースで見た名前を無意識に覚えてるんじゃないの?」
トド松先輩が心配そうに言う。
そうなのかな……?
私は記憶のページをめくる。
「見たのはつい最近な気がするんですけど……」