《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第10章 銀行強盗
「それは……」
私は俯いた。
やっぱりそこまでの覚悟は今はない。
「無理です……すみません……」
私が頭を下げると、トド松先輩が急に笑い出した。
「もー! そんな真面目に答えないでよ! 凹むでしょっ! 分かってるから! あまりに気まずそうにしてたから、からかっただけ!」
「そうなんですか?」
トド松先輩は頷いた。
「半分は本気だったけど……でも、普通に考えて僕と一緒に来てくれるわけないよね。ゆりちゃんが苦労して警官になったのは知っているし」
「先輩だって、本気で辞めるつもりじゃないですよね?」
「まあ……そんなすぐにはね」
トド松先輩は伸びをすると書類を片付け、頬杖をついた。
「ゆりちゃんてさ、なんで警官になろうと思ったの? ゆりちゃんぐらい可愛ければ、社長秘書とか、企業の受付とか、それこそアイドルとか、いくらでも他の仕事ありそうだけどな〜」
警官になろうと思った理由、か……。
はっきりとした理由なんてない。
いつからか警察学校に行きたいと思うようになっていた。
でも、一つだけ、思い当たるとすれば……。
「私、小学生の頃に銀行強盗に巻き込まれたことがあるんです」
「はっ!?」
トド松先輩の顔色が変わる。
先輩は身を乗り出した。
「巻き込まれたって……人質になった、ってこと?」