《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第9章 犯人はあなたですね
「設定は4℃でも、実際は機械の発熱のせいで部屋の温度が全然下がらない。部屋の奥にあるセンサーでそれを感知して、もっともっと冷やそうと空調から冷気が送られ続けているんです」
私は話し続ける。
「でも、入り口付近は機械がないので、デカパン所長の倒れていた場所は、すぐに温度が下がってしまう。だから、この場所だけ冷気が溜まってとても寒いんです。遺体の腐敗の進み具合も遅いんじゃないでしょうか?」
十四松さんが口に手を当てて呟いた。
「遺体は冷蔵庫で保存されていたのと同じ状態だったってことだね……」
「はい。実際の死亡時刻はもっと前だと思います。デカパン所長は昼休みよりも前にすでに殺されていたんです」
「そ、そんな!」
捜査員たちがざわつき始めた。
なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。
『所長は昼休み中に殺された』という前提で、今までみんなで地道に捜査を続けてきた。
この大前提が崩れされば、捜査は完全な振り出しに戻ってしまう……。
チョロ松警部が腕を組んだ。
「ゆりくん、その日は工員はみんな昼休みになるまで製造室で働いていた。一松さんも昼休みまでは仕事を抜けていない。昼休み前に工場の人間がデカパン所長を殺すなんて不可能だよ」
私は頷いた。
「そうです。だから犯人は工場の従業員ではありません」