《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第2章 謎はブラックに始まる
トド松先輩が不思議そうに私を見た。
「一松さんと知り合いなの?」
「さっき守衛室の場所を教えてもらったんです」
チョロ松警部が私たちの言葉を遮るように咳払いをした。本題に戻るようだ。
「ちなみにお二人は昼休みの間は、どこにいらっしゃいましたか?」
「シェ、シェー!? ミーたちを疑うザンスか!?」
イヤミさんがシェーのポーズをする。
「いえ、アリバイの確認でお約束みたいなものです。教えていただけませんか?」
「ミーは1階の事務室にずっといたザンスよ。嘘じゃないザンス! 他の事務員に聞けば分かるザンス」
チョロ松警部は頷いた。
「なるほど。一松さんは?」
一松さんが驚いたようにビクッと体を震わす。
「え……俺は、食堂で昼飯食べていたけど……」
「誰と一緒にいました?」
「食堂には2班全員いたよ……」
「分かりました。ご協力ありがとうございます。あ、そうそう、デカパン所長は人から恨みを買ったりしていました?」
イヤミさんが呆れたように首を振った。
「『ブラック工場』の所長ザンスよ? 聞くほうがヤボってもんザンス!」
「つまり、所長を殺す動機のある人間はたくさんいるんですね?」
「そうザンス! 働かせてあげてるのに逆恨みもいいところザンス!」
「分かりました。では、次は2班の他の方々にもお話を聞けますか?」
「いいザンスよ! 一松! 案内して差し上げるザンス!」
イヤミさんが、一松さんを振り返る。
「あー、はい……。じゃあ、2班のところへ案内するんでどうぞ……」
やる気のなさそうな声で言うと、一松さんはふと私を見た。
え? 何……?
急に目が合い、ドキッとする。
でもそれはほんの一瞬で、一松さんはすぐに何事もなかったかのように歩き始めた。
今の何だったの……?
「あれ? ゆりちゃん、顔が赤いよ?」
トド松先輩が覗き込んできた。
「何でもないです!」
一瞬でもドキッとしたなんて、先輩にバレたらその後ずっとからかわれるに違いない。
私は慌てて一松さんを追いかける。チョロ松警部とトド松先輩も後に続いた。