《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第2章 謎はブラックに始まる
一松さんが班長を務める2班は、事件が起こったせいで作業を中断し、寮で待機中だった。
普段、働きづめの彼らにしてみれば、思いがけず訪れたこの時間は、貴重な休息時間なのだろう。ほとんどの工員がベッドに横になっている。
私たちは順番に部屋を回って、2班全員に話を聞いた。
証言は皆同じだった。
昼休みは、全員が揃って食堂で食事をしていたという。休憩を終える時も、一斉に食堂を出たそうだ。
ただ、気になる証言が複数人から出てきた。
「そういえば、食事の途中で班長の一松さんがいなくなった時があったな。10分くらいかな。まあ、トイレにでも行ってたんだろうけど。一松さんって、仕事中も、ちょこちょこ抜けるんだよ」
工員たちの話を合わせると、食堂を途中で抜けたのは一松さんだけだった。
一松さん、さっきはそんなこと言っていなかったのに……。一体、何をしていたの?
当然、不審に思ったのは私だけではない。
トド松先輩がメモを取りながら、「警部、一松さんが怪しいですね」と言うと、チョロ松警部も顔をしかめて頷いた。
「そうだね。疑いたくはないけど……」
疑いたくはなくても、一松さんにだけアリバイがなければ、容赦なく捜査の手が伸びるだろう。
一松さん、大丈夫かな……。
手元の手帳に視線を落とす。
『一松さん、10分間の空白あり』
乱雑にメモしたこの言葉を、私は何度も丸で囲った。
***
《第2章で分かったこと》
・新人刑事ゆりは、初めての現場で遅刻した
・新人刑事ゆりは、捜査一課のチョロ松警部の部下でトド松警部補の後輩。3人は同じチーム
・ブラック工場でデカパン所長が昼休み中に殺された。殺された場所は製造室の入り口。
・一松は工場の裏庭でミーコという猫を可愛がっている
・一松には、昼休み中に10分間アリバイのない時間が存在する
・ブラック工場は、IDカードがないと入れない
第3章へ続く――。