《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第2章 謎はブラックに始まる
「なんザンス? 失礼な小娘ザンスね!」
「あっ、す、すみません……!」
しまった。心の声が無意識に!
慌てて謝ると、イヤミさんは誇らしげに胸を張る。
「まったく、居心地のいい刑務所なんかと一緒にしないで欲しいザンス! うちの工場のほうがずっと劣悪で最悪な環境だと自負しているザンスよ!」
「え……」
「うちは福利厚生もバッチリザンスよ! 寮は工場内にあるから、24時間いつでもすぐに働けるし、いざという時のために敷地内には墓も建ててあるザンス!」
「墓!?」
ギョッとして声を上げると、イヤミさんはニヤリと笑う。
「至れり尽くせりザンショ?」
「は、はあ……」
至れり尽くせりの方向性がなんか違うような。何人の工員がここで最期を迎えるのだろう。
作業服の男性は、何を考えているのか、無表情で私たちのやり取りを見ている。
イヤミさんは喋り続けた。
「なのに近頃の若者ときたら、感謝の気持ちが足りないザンス! 会社のために身を粉にして必死に働く! これが仕事! これが社会! ああ、素晴らしい! こういう気持ちが大切ザンス! チミたちもそう思うザンショ?」
「「「「…………」」」」
今度は誰も返事をしない。突っ込みどころが多すぎる。
「……ま、まあ、とにかく早く犯人を捕まえて欲しいザンス!」
「分かりました」
チョロ松警部は答えると、作業服の男性に視線を移した。
「ところで、そちらの男性は?」
イヤミさんが「ああ」と気づく。まるで男性の存在自体を忘れていたような反応だ。
「2班班長の一松ザンス」
一松さんって言うんだ。班長ってことは、それなりに偉いのかな?
瞬間、チョロ松警部が大きく「あっ!」と叫んだ。