双子の悪戯 Fred and George Weasly
第1章 三年生、クリスマス。
「おい見ろよ、ハリーもウィーズリー家特製のセーターを持ってるぜ!」
ハリーが何かを隠した気がしたが、誰にだって秘密はある。ジョージとフレッドにだって、家族にもリーにも言えない秘密を持っている。
「ハリーの方が上等だな、お袋は身内じゃないとますます力が入るんだ」
フレッドがハリーのセーターを手にとって言った。
「ロン、着ろよ。とっても暖かいじゃないか」
ジョージはロンにセーターを着ることを強く勧めた。
「イニシャルが付いてないな」
Fのイニシャルが入ったセーターを着たフレッドが気づいた。
「お袋はお前なら自分の名前を忘れないと思ったんだろう。僕たちだってそこまでバカじゃないよ、グレットとフォージさ」
フレッドが言いながらニヤッとする。
そこにパーシーがやってきて、朝食に降りることになった。
動く階段を降りている途中、不意にフレッドに手を握られた。
「おい、ダメだってフレッド」
目の前に兄、弟、弟の親友がいるというのに。
その声が聞こえたのか、3人の中で1番後ろにいたハリーが振り返った。
フレッドが慌てて手を離して、なんでもない風を装うと、ハリーも見間違いだと思ったのか前を向いた。
「ごめん、ジョージ」
「気にするな、相棒」
気にするなとはいったものの、少し悲しい気持ちになった。
ハリーに見られたからではない。
フレッドとジョージの関係は、公言できないものだからだということを改めて感じたからだ。双子だからという理由で、同性だからという理由で、2人は幸せなのにもかかわらず。
もし知ったら、ロンはどう思うんだろう。パーシーは、ビルは、チャーリーは、ジニーは?お袋は?親父は?
フレッドは神妙な顔をしていた。多分、同じことを考えているのだろう。
フレッドがせっかくのクリスマスに暗い気持ちにならないように、そっと腕に触れた。
このことは考えないようにしよう。
だってホグワーツのクリスマスはやっぱり、どんな時も楽しいから。