双子の悪戯 Fred and George Weasly
第2章 ~2ヶ月前~追憶
この後は、なにも授業がなく、幸いなことに宿題も出ていないので、自由な時間だ。
フレッドとジョージは就学前の妹、ジニーに手紙を書いたのでそれを出しに行くことにした。
「なあ、どのトイレの便座を送る?」
「違うよ、お袋は『トイレを吹き飛ばす』って言ったんだぜ」
「どっちも一緒だろ、吹き飛ばしたら便座は送るし、便座を送るとなったら吹き飛ばすだろ。お前がジニーに便座を送ってやるって言ったんじゃないか」
「確かにそれもそうだな」
上の空で返事をする。
まだ頭の中にあのレイブンクローの子とのことが残っている。
タペストリー裏の近道を通る。
「なあフレッド。最近おかしいって。」
急にジョージが立ち止まるので、フレッドも立ち止まる。
「なにがだよ?」
「土曜からずっとだ。話しかけても上の空だし、3日間いたずらゼロだぜ。」
「ああ。そのこと。なんでもないよ」
怒りの矛先がジョージに向けられる。
ジョージに好きな人ができたからって、その子が可愛いからって、そのことをひとことも教えてくれなかったって俺が怒る理由にはならないだろ?そうだよな?
「なんでもなくないだろ」
ジョージが優しくいう。
限界だった。今みたいな気持ちがずっと続くならもう壊れてもいいと思った。
「ああ、なんでもなくないよ!!!」
フレッドは半分叫ぶように言った。
ほとんど泣きそうな気持ちだった。
「あのレイブンクローの女の子はなんだい?ガールフレンドか?僕になにも言わないで、お前は何をやったんだ?!僕たちずっと一緒にやってきたじゃないか!」
「僕たちの見分けもついてないんだぜ、あの女の子は!」
胸が張り裂けるんじゃないかと思いながらフレッドは言った。
ジョージは驚いた顔をしただけで、何を考えているのか読み取れなかった。
「あの子は。なんでもないよ」
ジョージは静かに言った。怒っている様子はなかった。
「あの子の事が好きなのか?嫉妬してるのか?」
そういうジョージの声は静かすぎて悲しそうにさえ聞こえた。
だけどフレッドはもっともっと悲しかった。
フレッドは生まれて初めて1人ぼっちだと思った。