第7章 伝えたい……でも伝わらない
ヒカルside
どうして……伝わらないんだろう……
赤く染まった空の下……
ただイツキの後ろを歩く。
「ヒカル……」
優しい笑顔で振り向きボクに手を差し出す。
手を繋ごうという意味かな。
でも……
ボクは立ち止まって首を横に振る。
「……そうか……」
そんなに悲しそうな顔しないでよ。
優しくしないで……触れないで……声掛けないで……
今にも声が出そうになる。
でもグッと堪える。
そんなことしたらイツキが困るのは分かってるから。
長く歩くと騒がしくなる。
「ヒカル、流石に手繋いでないと迷子になる。」
……確かに人が多すぎる。
手……握った方が……
イツキの差し出す手に手を重ねる。
……駄目……やっぱり……我慢出来ない。
ボクは手を離し逆方向に走った。
少しでもイツキから離れたかった。
なのに……
「ヒカル!待て!!」
来ないでよ……一人になりたい……
「おい!ヒカル!」
「っ!」
すぐに追いつかれた。
周りは誰もいない。
空は既に暗くなっている。
「どうしたんだよ!ヒカル!お前変だ!」
右手を強く握られる。
その手は大きくて……優しくて……
なのになぜかイライラして振り払ってしまった。
「どうして……」
「?」
「どうして!?伝わらないの!?」
「っ?!」
「イツキの事好きなのに!!」
「いや……それは知ってる。」
「違う!イツキが思ってる好きとは違うの!イツキがソウタにキスした時!凄く胸が痛くて……嫌だ、取らないでって思った………触れられるとドキドキして……もっと触られたいって……ボクだってキスしたいって!……間違いない……これは恋だって思ったんだ……」
喉が痛い……
でも言いたい……全部……吐きだしたい。
「大好き……イツキの事大好きなんだよ!」
言った……もう、全部言った。
喉が痛いからかスッキリしたからか目が熱い。
イツキの顔もよく見えない。
「ヒカル……」
ドーン!
なにか言おうとして大きな音が空で鳴った。
暗い空には大きな赤い花が咲いていた。