第6章 この感情の答え
樹輝side
住んでいるマンションが見えてきた。
ヒカル……ヒカル!
見上げるとヒカルがぼーっと下を見つめていた。
走って階段を駆け上がる。
喉は血の味で気持ち悪い。
4階に着くと、ヒカルが手すりに足をかけていた。
「ヒカル!」
ヒカルにしがみつき手すりから離す。
ドサッ
「はぁ……はぁ……お前……何やってんだ!」
パシッ
「いっ……」
思わずひっぱたいてしまった。
同時に俺の頬もヒリヒリと痛む。
そのまま抱きつく。
お互いにビシャビシャに濡れていた。
ヒカルは若干震えていて、寒さが伝わってくる。
「……ごめん……」
「離して!」
ヒカルが俺を突き放す。
「……触られると……ズキズキ痛むから。」
俺にもそれは分かっていた。
何故かは分からない。
たぶん、ヒカルの感情だ。
「……風邪ひく……中に入るぞ。」
「……うん。」
ヒカルはさっきから目を全く合わせない。
様子がおかしい。
胸の痛みは時間がいくら経っても消えることは無かった。