第16章 それぞれの生きる道
樹輝side
いつも通りの朝、いつも通りの世界……
何も変わらない今日がまた始まった。
ただ一つ……俺の隣で寝ているのは月ではなく、顔の似た双子の兄の陽。
あの後、月の遺体はあの場に置いてきた。
何とか義父さんに頼んで墓作ってやりたい。
ひっそりと葬式をして、火葬もして。
もちろん、テレビでは朝方の事が騒ぎになっていた。
すぐに俺だとバレるだろう。
「……ここどこ?」
陽が目を覚ました。
キョロキョロと周りを見渡している。
「俺の家だ。」
「……月は?」
「……死んだ。」
「は?……死んだ?……」
陽は頭を抱え顔色を悪くした。
「月がお前に『幸せだった』って伝えて欲しいって。」
「幸せ?けど月は死んだ……」
「死んだからって幸せじゃねぇのかよ。生きている間、アイツは幸せだったんだ。俺も月が幸せだったなら幸せだ。出会えてよかったと思う。」
テレビの音に気づき、陽がニュースを見た。
「これ……」
「……俺ももうすぐ死ぬ。すぐにバレて殺される。」
「……そう。」
陽だけでも生きてほしい。
母親を失い、弟を失った。
これ以上、辛い思いをしなくていいはずだ。
「……俺、学校に行ってくる。その間、留守番頼むぞ。」
「……うん……」
陽の顔を伺い不安になりながら俺は家を出た。