第15章 ズレた思い
樹輝side
「月……会いたかったよ……」
「……僕もだよ。」
月の喋り方に違和感が無くなった。
記憶が戻ったからか?
「月、もう時間だ。……あと少しで終わる。」
陽はそう言って俺の服を引っ張りながら屋上に向かう。
そうだ……あと少しで……
これで……
「っ!樹輝!!」
月の声が響き渡る。
その声には皆驚いた。
「駄目だよ。そんな事しちゃ。」
「……お前の為なんだ。」
「樹輝は何か勘違いしてるよ……」
勘違い?
そんなはずない。
これが正しい。
愛する者を幸せにする為……
「僕はこの世界が大好きだよ。花や空や雲や風……今となっては記憶が戻って当たり前の事だけど……樹輝が優しく教えて一緒に歩いてくれたあの街が大好き。だからお願い……僕の思い出を消さないで。僕は今凄く幸せだよ?それじゃ駄目かな?」
月のその言葉は俺の考えを揺るがした。
月が好きなこの世界を壊せば……月はショックを受けるだろう。
俺と月の思いはズレてたのか。
大好きな世界で大好きな人と暮らして大好きな事して……
確かに……幸せだ。
そんな幸せを……俺は壊せない。
「陽……止めよう。月の為になんかならねぇ。」