第15章 ズレた思い
樹輝side
下の階から叫び声が聞こえた。
それまでも轟音は何度も聞こえていたが、こんなに悲しんでるような叫び声は初めてだった。
海堂の声か?
「何?今の……」
俺は気になり、階段を下りた。
「……うわ……殺したの?あれ。」
隣でキングが少し引きながら尋ねてきた。
颯太が倒れて、それを抱き抱える海堂の姿があった。
颯太が……殺された……?
嘘だろ……
こんなの……あっていいはずがない……
何でこんな事に……
「……あれ、もう死んじゃった?意外と早かったね。まぁ、いいや。じゃ……次は……君だ。」
そう言って指差したのは海堂だった。
「……お前を……許さねぇ!」
その声はさっきの悲しみが含まれた叫びではなく、怒りが含まれた叫びだった。
叫んだ瞬間、海堂の身体は炎に包まれた。
海堂が颯太に対して特別な感情を抱いたことで能力を引き継いだ。
普通の人間だった海堂の姿はもうどこにもない。
今のアイツは怒り狂った獣のようだった。
海堂は完全な火の能力者になってしまった。