第3章 将樹
樹輝side
いってぇ……なんか右目が……痛む。
それも少しじゃない。
何度も潰されているように感じる。
「ただいま。……ヒカルー?」
帰って来てリビングに向かうがヒカルは見当たらない。
よく見ると、浴室の方が明るい。
トイレか?
「うっ……」
「ヒカルー?大丈夫……か……」
覗き込むと、しゃがみ込み、片手にハサミを持って右目を刺していた。
「ヒカル!離せ!」
「死にたい……死にたい……」
全然声が聞こえてない……
必死にハサミを奪い取ろうとするが……だめだ。
「何でぇ!何で死ねないの!?何でっうっ!」
パシンッ……
……はっ!しまった!俺!
ヒカルにビンタしていた。
「……イツキ?……何で……」
正気に戻ったようだ。
俺は思いっきり抱きしめた。
「何やってんだよ……心配させんな!」
「ご、ごめんなさい……」
「……あーもう!何だよその髪!来い!」
「へ?」
自分で切ったんだろう、前髪がガタガタだ。
これならメッシュにするしかないな……
「イツキ?何やってるの?」
「整えてんの、ほら前向け。」
ヒカルは黙って俺の方を真っ直ぐ見ていた。
それより……さっきの目の痛み……消えてる。
ヒカルの目も完全に治っている。