第15章 ズレた思い
樹輝side
「君の友達凄いね(笑)」
「将樹の事か?」
「そうそう。将樹君。強いねぇ。まぁ、倒れちゃったみたいだけど(笑)」
倒れた?
将樹が?
不安と恐怖が頭の中をグルグルしていた。
将樹が倒れた……
あんなに強いのに。
だったら昂や颯太、愛美も危ない。
海堂に至っては普通の人間だ。
死ぬかもしれない。
やっぱりあいつらを追い返すべきだった。
「……安心しなよ。弟が……ヒカルが治してるから。」
安心できない。
俺のせいで命を失ってほしくない。
どうにかして帰さねぇと。
「お前の力でアイツらを追い返せねぇのかよ。」
「は?めんどくさい。言っとくけど、僕の力は結構体力使うの。無理。」
「だったら仲間に命だけは狙わねぇように命令できねぇのかよ。」
「無理無理。止められない。というか、前に戦うのは自由にしてって言ってるから(笑)」
そんな……
何か方法はねぇのかよ。
「大丈夫だって。ヒカルがいるんだし。君は今自分がやるべき事を考えな。」
そう言って屋上に辿り着いた。
まだ空は暗く、冷たい風が吹いている。
「俺、自分の力をまだ使えねぇんだけど。」
「え?今それ言う?まぁ、いいよ。始めるのは日が出てくる頃だから、それまでに使えるようになれば。能力はやろうと思えばすぐ使えるから。」
「……あのさ、俺にお前の力使えばいいんじゃないのか?そうすればもし、俺が協力しなかった場合でも自由に俺を動かせるだろ。」
「君には効かないんだ。」
「何故だ?」
「分かんない。ヒカルのも効かないでしょ?それと一緒じゃない?」
「けど、それだったらお前とも異体同心の関係に……」
「その関係が成り立つのは1人だけだよ。……僕と先に出会ってれば君と僕はその関係になってたかもね。」
なるほどな。
出会ったのがヒカルだったから今の関係にあるのか。
「日の出まで後少しだね。」