第15章 ズレた思い
颯太side
俺らは将樹君の元に近づく。
近くで見るとこんなに体格差があったんだ。
「流石将樹!圧勝だったな!」
昂君が将樹君の肩に手を置いた。
後ろを向いていた将樹君がそれに気づき振り向く。
「お、おう……」
「おい……大丈夫か?」
将樹君の顔は血だらけで少し出血していた。
顔色も悪い。
今にも倒れそうだった。
「これぐらい……大したこと……」
「将樹!?」
気を失って倒れてしまった。
急いで昂君が首元の脈をとった。
「……生きてる。ヒカル!手当頼む!」
「うん!」
将樹君がこんなになるなんて……珍しい。
やっぱあの一撃は結構効いてたのか。
「将樹君の治療も大事だけど、速く上に行かないと……時間が無い。」
「そうだな。だからって置いてはいけない。」
「ぼくが見てるから先に行ってて。すぐに追いかけるから。」
ヒカルが治療をしながら俺らに言った。
「けど、ヒカルも一緒に……」
ヒカルが1番いっくんの元に行きたいはずだ。
置いてはいけない。
「これからずっといつきと一緒に居られなくなるのは辛いから。だから、早く行っていつきを止めて。お願い。手遅れになる前に。」
「……分かった。晃。おまえもここにいろ。」
「え!どうしてですか!?」
「2人だけじゃ不安だし。晃がいてくれた方がいい。」
「そんな……」
晃が悲しそうな顔をする。
申し訳ない気持ちは一杯だけど……
これが1番いい。
俺は晃に抱きついた。
「大丈夫だって!ちゃんと会えるから!死なねぇよ!」
「……当たり前です。死んだら許しませんから。」
「……終わったら、何処か行こう。いっぱい遊ぼう。デートしよう。約束。ね?」
「……約束ですよ?」
晃が力強く抱きしめ返す。
暖かい。
ちゃんとここに帰ってこよう。
晃の胸に。
「ただいま」って。
「2人を頼んだぞ。」
「はい。」
「私達はそろそろ行かないと。」
愛美ちゃんが昂君に声をかけた。
「そうだな。颯太、行くぞ。」
「うん。」
約束はちゃんと守るから安心しろ。
生きて会えたときはな。