第15章 ズレた思い
ヒカルside
「ちょっと!」
上の方から声が聞こえて見上げると、階段付近にぼくに似た男の子と隣にはいつきがいた。
「いつき!!」
名前を呼んだけど、返事をしなかった。
反応すらしなかった。
「分かってると思うけど、ソイツ殺したら許さないから。」
「分かってるって。いいからさっさと進めなよ。ソイツ連れて。」
「……ならいいけど。行くよ、樹輝。」
「っ!いつき、待って!」
ぼくの声にいつきが立ち止まった。
「すぐ助けに行くから!だから、待ってて!」
「来るな!」
いつきのその言葉に皆が驚いた。
どうして?
助けに来たのに……なんで……
「頼む……帰ってくれ。」
「い、いっくん?」
「お前の為なんだ……お前が幸せになる為にこの世界を変える。だから……帰ってくれ。巻きこみたくねぇんだ。お前らを。」
何言ってんの?
ぼくのため?
世界を変える?
「いつき……そんなの嬉しくないよ!やめて!」
「そ、そうだよ!いっくん!そんなのおかしい!きっと、そいつに騙されてるんだよ!」
「いつき……目を覚まして……」
「……覚ましてるよ。お前の為なんだ。」
そう言って階段を上がっていった。
待って……行かないで……
世界を変えるって……
全然嬉しくないよ……いつき。
そんなの間違えてる。