第14章 愛する者の為
樹輝side
頬に冷たいものを感じ、目を開けた。
目の前には綺麗な青と黄色の瞳を持った少年がいた。
「……ヒカル。」
「どうしたの?いつき。」
冷たいものの正体はヒカルの手だった。
細い指の着いた小さくて白い手。
俺の顔を覗く様にして上目遣いで微笑む。
……ヒカル……じゃない……
「お前誰だ。」
「誰って……今僕の事ヒカルって……」
「ヒカルはそんな作り笑顔しねぇ。あいつは素直に顔に出る。それに、俺を縛ったりしねぇだろ。」
オレは後ろ手を縄で縛られていた。
首筋には僅かな痛みが残っている。
「バレちゃった?(笑)」
そう言って少年は俺の頬から手を離し、小さく笑いながら背を向ける。
「……ヒカル……ねぇ。あんたが付けたんだろ?」
「……。」
「……あれね……僕の弟だよ。双子の。」
その言葉を聞いた瞬間、驚いて言葉が出なかった。
似ているのもそれが理由か。
納得がいく。
人の体をコピーできる能力者かと思っていた。
「僕はキングって呼ばれてる。僕の能力は人の心と体を思い通りに動かせるんだ。人の体を支配する。それが由来。もちろん本名はあるよ。聞きたい?」
「……興味ねぇ。」
「弟の本名は?」
「……聞かなくていい。」
本当は気になる。
本名を知りたい。
でもここで頷けばこいつの思い通りになる気がする。
「ふぅん。」
適当にそう返事を返したキングは俺に再び近づいてくる。
そして、俺の上に座り両腕を首に回した。
まるで誘惑する様に……キスをした。
「っ!?何すんだよ!?」
「何って……あんたが普段僕の弟にしてる事だよ。……僕の弟とするのは気持ち良かった?」
「……お前に関係ない。」
「僕、弟より上手いと思うよ?試さない?」
「生憎だが、お前には興味がない。俺はヒカルを愛している。」
「……つまんないの。」
そう言って再び俺から離れる。
正直、少し危なかった。
ヒカルとそっくりすぎて、流される所だった。