第14章 愛する者の為
樹輝side
「……いっくんってさ……ツンデレだよね……」
おんぶされたまま、颯太がそんな事を呟く。
「こういう時に言う事じゃねぇだろ……ツンデレじゃねぇし。」
「ごめんごめん。……助けるつもりが……逆に助けられたな……ありがとう。」
「その言葉はまだ早ぇよ。」
目的地が無いままただただ走り続けた。
もう逃げ道なんてない。
屋上もきっと駄目だ。
何処に行けば……
走って行くうちに裏門近くに来た。
「樹輝先輩!!こっちです!」
「海堂!?」
海堂が入り口近くに立っていた。
周りには軍隊が倒れてる……
海堂の後ろにはもう1人背を向けて立っていた軍人が崩れ倒れた。
そいつの後ろから現れた人物は……
「いつき!」
ヒカルだった。
キスして殺したのか……?
この数を?
「どうしてここに……」
「いつきが危ない気がしたから。」
ここまで走ってきたのか……
「とりあえず、ここから出ましょう。」
「待て!そこから動くな!」
逃げようとしたら周りを囲まれてしまった。
一斉に銃を向けられる。
「古賀樹輝……ゆっくりとこっちに来い……」
俺はこいつらが危険な目に会わないように言う事を聞くことにした。
颯太を海堂に預け、両手を挙げながらゆっくりと近づいていく。
「……僕の邪魔をするな……」
後ろから声がした。
振り向こうとすると、目の前の隊員達が自分の頭を銃で撃ち抜いた。
何が起きてるんだ……
何で……自分で……
振り向いた目線の先にはヒカルと全く同じ顔をした少年がいた。
目の色もヒカルと一緒だ。
将樹の言ってた奴か……
「やぁ、初めまして。古賀樹輝君。」
「……誰だ……」
「……一緒に来てくれたら教えてあげるよ。」
「っ!?」
「いっくん!!」
「樹輝先輩!」
「いつき!!」
3人の俺を呼ぶ声を最後に気を失った。
首元に僅かな痛みを感じた。