第12章 味方か敵か
樹輝side
俺たちは家に帰って来てヒカルはベッドの上に横たわる。
「ヒカル。何か食べるか?」
「……ううん。いい。」
元気がない。
何か考えこんでいる。
俺にもヒカルのモヤモヤした気持ちが分かる。
俺もヒカルの横に添い寝し、後ろから抱きしめる。
ヒカルは何か考え事をしているときにこうやって抱きしめると少しだけ安心するんだ。
けど……今日は違うようだ。
変わらない。
「ヒカル……どうしたんだ?」
「何でもないよ……」
「嘘つくなよ。どんなに隠しても俺には分かる。忘れたのかよ。」
「……そうだったね……」
ヒカルは俺の方を向くことなくそのまま話をする。
「イツキがボクの前から居なくなったら……どうなるのかなって……さっきの男の人イツキを欲しがってた。ボクも守らなきゃって思ったけどできなかった。何もできなかった。このままじゃイツキ居なくなるのかなって……」
俺がヒカルの前から消える……
俺だってヒカルが居なくなればきっと壊れるかもしれない。
ヒカルのおかげで生きるという言葉に重みを感じる様になった。
毎日過ごす普通の日常だってこいつがいるだけで楽しい。
「俺は居なくならないよ。ずっと傍にいる。そして、寒い時はこうやって暖めてやる。守ってくれなくても、俺は離れねぇから。」
「……暑い時は?」
「そうだな……海に行こう。」
「うん……」
ヒカルは俺の方に向き直す。
「でもね、ボクはイツキがいてくれるだけでいいよ。別に海に行かなくてもいい。こうやって毎日身体を合わせるだけでボクは充分に幸せだよ。」
「……俺だって……幸せだ。」
「イツキ……大好き。」
「俺もだよ。」
俺はキスを交わしそのままお互いの熱を感じ合った。