第1章 1
「そ、それなら」
上目遣いの七海ちゃんから目をそらして、気持ちを落ち着かせてから(噛んだ時点で落ち着いてないけど)、僕はまた七海ちゃんと向き合う。
「その限定版を、『超特別限定版』にしてあげるよ」
「『超特別限定版』・・・?」
七海ちゃんが不思議そうに首を傾げる。
僕は七海ちゃんからアルバムを受け取ると、スタジオ内を見回して、テーブルの上に転がっていた油性のペンを手に取った。
そしてサッとペンを走らせる。
───はい、完成。
「youさん・・・これは・・・」
「ん、『超特別限定版』☆」
僕がアルバムに書き込んだのは定番のサイン、だけではなく、七海ちゃんの名前と簡単な絵。
「『超特別限定版』・・・・・・」
「うん、そうだよ」
「この・・・名前の横の・・・これは・・・?」
「え?ネコだよ?」
───僕は、七海ちゃんの好きなネコを描いたつもりだったんだけど。