第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
「本当に顔色悪いですよ
すぐ水持ってきますから」
私の頭を優しく撫でて
リビングに戻ろうとする京治に
『…嫌だ…行かないで…』
ふらつく身体でしがみつく
「え?」
『一緒にリビングに行くから
一人で行かないで…』
知らないアナタが怖いよ
二人の時間が少なくなればなるほど
知らないアナタが増える気がして
「それは、もちろん良いですけど…
どうしたんです?」
怖いの…
『京治…好き…』
大好きなのに…
あんなの私の考え過ぎだって
きっと笑い話になるって思うのに
「俺も好きですよ
抱っこして行ってあげますから
大人しくしてて下さいね」
『うん…』
問い詰められない
京治の胸に抱かれて
夕餉の匂いが包むリビングに戻る
せっかく頑張って作ったけど
とても食べられそうにない
京治お腹空いてるかな?
きっと一緒に食べたかったよね?
でもでも…
私の頭は空腹も気遣いも
私の中から追い出していく