第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
信じたいのに
信じてるのに
『…浮気願望、ある…?
私が…忙しくばっかりしてるから、かな…』
後から後から
追い掛けて来る不安と不満
どうにか気持ちをリセットしないと
そう思って晩御飯の支度の続きをするけど
『痛…指切っちゃった…』
凡ミスが続き
より凹む始末
京治が出て来るまでに
バッチリ仕上げたかったのに
出来そうにない
動いては止まる手
溜息が多くなる私の耳に
携帯の着信音が小さく届く
まさか、京治の?!
慌てて音の方に足を進めると
『あ、私のか…
光太郎??なんだろ…』
光ってるのは私の携帯で
相手は光太郎だった
料理の途中だし
この時間の電話なんて
どうせ、暇電だから
無視する事も出来たけど
『もしもし、なによ』
つい、出てしまった
聞きたかったのかも知れない
〈姫凪ー!
オレオレ!分かるかー!?〉
この能天気で底なしに明るい
光太郎の声を
『登録してるんだから
分かるわよ
飲んでるの?』
「おぅ!黒尾くんが
久々に一人ぼっちって
電話して来たからさー」