第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
「んー…?日曜…か。
姫凪さん…?!」
寝呆けた声を上げて
空になった隣に慌てて身体を起こすと
『あ、京治起きたの?
まだ寝てて良かったのに
昨日サークルの飲み会で遅かったでしょ』
寝室のドアが開いて
眩しい笑顔と優しい声が入って来る
姫凪さんが独り暮らしを始めて
しばらくはお泊りもこの会話も
「嫌ですよ
二度寝して起きたら
もう姫凪さんは仕事に行ってるでしょう」
ほら、まただ。
抜けてない酒のせいもあるんでしょうが
スルッと入って来ないから
『拗ねないでよ…
仕事だもん、仕方ないでしょ?
てゆっか光太郎と遊びに行くって
言ってたじゃん一緒に出る?』
最近は困った顔をさせる事が
多くなってしまった
頭では分かってる
夢だった美容師の道を
歩き始めた姫凪さんを応援したい
笑顔で送り出したいから
わざと一人の休みに予定も入れた
なのに
「…出ません…抱きたい…
姫凪、来て?」
心が全然ついて来ない