第69章 咲く恋、散る恋、芽吹く恋(宮侑 治)⑤
あの頃、サクラが治を好きやって
分かってても
サクラが俺を見てくれんでも
こんなに辛くなかった
この痛みに比べたら
笑って乗り越えられる気がしてた
でも、アカンねん
「…サクラ、辛くても
お前を好きで居れば良かったんかな…
なんか…疲れた。
良い人…限界かも知らん…」
姫凪の事になったら
笑われへん
楽観的になんかなられへん
悪い方にばっかり考えて
嫌な妄想が巡っては
姫凪を責めてまう
"姫凪なんか"
何回思ったやろうな
でも、な。
「侑くん…?」
「サクラ…ごめんな…
アカンわ、メッチャ好きやわ…」
心は痛みを超えて姫凪を
好きだと言ってんねん
辛いのに
もしかしたら、振られて
終わるかも知らんのに
アホみたいやろ?
「知っとるよ」
「…ん?」
「同じやもん、分かるで?
良い人限界やのに
無理しても何しても
変わられへんねやろ?」