第61章 クロ猫と傘と恋(黒尾鉄朗)企画転載 完結
「…傘がなに?」
『クロくんこそ…』
平行線な会話
交わらない気持ちは
『…ゴメン…
呼び寄せるみたいな事…深い意味は…』
少しずつ
磁石が引き合う様に
「ねぇの?
深い意味があって欲しいのは
…俺だけ?」
ジリジリと近付いて
『…クロ…くん?』
「逢いたかった…
姫凪さん…開けてくんね?」
二人の間の壁を一枚
取り払う
『でも…』
「顔みたい…
姫凪さん…抱き締め…たい…」
俺の心の偏ったコダワリも
「姫凪…俺を抱き締めて」
パラパラと剥がれて
雨の雫と重なって足元に落ちていく
『ズルい…
そんな事…言われたら…』
ユックリ開くドア
「ズルいよ、俺は…
姫凪さんを離したくなくて
紳士なフリしてた
ズルくて弱い…でも…
姫凪さん…ゴメンな」
見えた白い手を引き寄せて
思いっ切り抱き締める
「姫凪さん…!」
久しぶりの温もり
甘過ぎない姫凪さんの香りに
「ゴメン…なんか…止まんねぇ」
触れ過ぎてしまう指
『クロくん!?
あの…待って……』
「…ヤッパリ駄目?
怒ってる…よなァ…」
必死に止めた指を
『怒ってるって言うか!
あの…止めた方が良い…よ
私は…その…クロくんを
縛り付けちゃう…から…
これ以上好きになったら…
重荷に…なっちゃう…から』
姫凪さんがグッと押し返す